浸水深で決める、備蓄の置き場所——0.5mで「取りに行く」ができなくなる

浸水深で決める、備蓄の置き場所

備蓄をひととおりそろえたあとに、もうひとつ決めることがあります。

どこに置くか、です。

押し入れの奥、床下収納、玄関の物入れ。どれも「じゃまにならない場所」ではありますが、水が来たときにどうなるかまでは考えていないことが多いと思います。

置き場所を決める手がかりは、ハザードマップの色にあります。色が答えているのは浸水の深さで、その深さは「取りに行けるかどうか」を決めています。

0.5mは、おとなの膝の高さ。ここが「取りに行く」ができなくなる境目です。

0.5mは、濡れる高さではなく届かなくなる高さ

浸水深0.5mというと、膝までなら歩けそうに思えます。

ところが国土交通省の「浸水深と避難行動について」には、こう書かれています。

「浸水深が膝(0.5m)の高さ以上になると、ほとんどの人が避難困難でした」

歩けなくなる理由は深さそのものではなく、流れと、水面下が見えないことです。側溝やマンホールの位置が分からなくなります。

これを備蓄の話に置き換えると、こうなります。

0.5mに達した時点で、1階の押し入れの奥へ取りに行くのは難しくなります。家の中でも同じで、水が入っていれば足元は見えません。

つまり置き場所を考えるときの基準は、「濡れない高さ」ではなく「取りに行ける高さ」のほうです。

なお、マップの色が何mを表しているかの読み方は、ハザードマップに「何日分いるか」は載っていないのほうで凡例ごと説明しています。この記事では、読み取ったあとの話だけを書きます。

濡れたら、中身が無事でも使いません

「缶詰やペットボトルなら、濡れても平気では」と思われるかもしれません。

これは成立しません。自治体の衛生対策のページは、水に浸かった食品は廃棄が原則としています。床上浸水では食器や調理器具の汚染から食中毒や感染症につながるおそれがある、とも書かれています。

浸水した水は雨水ではなく、下水や汚泥が混ざった水です。容器の外側が汚染されるので、開ける時点で中身に触れてしまいます。

浸水後の掃除や消毒のしかたは自治体が案内しているので、大阪市の「浸水後の衛生対策」のようなページを、お住まいの自治体のぶんで探してみてください。

浸かった備蓄は、数えていた日数から丸ごと引かれます。

備蓄を1か所にまとめてあると、その1か所が浸かった時点で全部なくなります。日数がゼロから数え直しになる、ということです。

ここからは、蔵太郎からの提案です

ここまでは行政が出している情報でした。ここから先の置き方については、公的な決まりがあるわけではありません。蔵太郎からの提案として読んでください。

考え方は3つです。

やること 理由
1か所にまとめない 浸かったときに全部を失わない
水とトイレだけでも上の階へ いちばん重くて、いちばん代わりが利かない
床下収納をあてにしない いちばん低く、開けるのに床に座る必要がある

全部を2階へ動かす必要はありません。重いものを運び上げるのは大変ですし、日常的に使うものが遠くなると、ローリングストックが続かなくなります。

分けるのは、代わりが利かないものだけで足ります。水と携帯トイレの一部を上の階へ置いておくと、1階が浸かっても手元に残ります。

  • ふだん使う分は、これまでどおり取り出しやすい場所に
  • いざというときの分は、別の階か、せめて高い棚に

ただし、2階が答えにならない家があります

ここは必ず確かめてください。

ハザードマップには浸水深とは別に、家屋倒壊等氾濫想定区域という区域が指定されています。堤防が決壊したときの流れの勢いで建物そのものが倒れたり、川岸が削られて地面ごと失われたりする範囲です。

横浜市の凡例には、この区域についてこう書かれています。

「屋内での退避ではなく、早期の立ち退き避難が必要な区域」

この区域にお住まいなら、2階に置いても意味がありません。建物が残らない前提の区域なので、在宅避難そのものが選択肢から外れます。

備蓄の置き場所より先に、どこへ避難するかを決めておく必要があります。

⚠️ なお、自治体が配っているマップに載っているのは河岸侵食のぶんだけ、ということがあります。お手元のマップに無いから存在しない、とは限りません。氾濫流の図は河川管理者が別に公表していることがあります。

見るマップは1枚ではありません

もうひとつ、置き場所を決める前に踏みやすいところがあります。

ハザードマップは1種類ではなく、洪水・内水・高潮・津波・土砂災害などが別々の地図になっています。ハザードマップポータルサイトではレイヤーとして切り替えられます。

とくに内水氾濫は、川から離れた内陸や低地でも起きます。「うちは川が遠いから」が効きません。

そして、2枚を見比べるときに必ず踏むところがあります。

ここでは作例として横浜市港北区のマップを使います。一級河川の流域にある政令指定都市の区で、洪水・内水・高潮の3種類がそろって公開されているため、多くの地域と同じ作りをしています。

その浸水ハザードマップの凡例には、はっきり書かれています。

「※内水ハザードマップの浸水深とは、浸水階級差が異なります」

実際の刻みを並べると、こうです。

洪水 内水
いちばん下の階級 0.0〜0.5m未満 2cm〜20cm
次の階級 0.5〜3.0m未満 20cm〜50cm
その次 3.0〜5.0m未満 50cm〜1.0m

横浜市港北区の凡例より(2026年8月29日に確認)。自治体によって刻みは異なります。

同じ色でも、洪水の地図と内水の地図では意味が違います。内水のほうがはるかに細かい刻みなので、洪水のつもりで見ると深さを大きく読み違えます。

分けたあとに残る、ひとつの問題

置き場所を分けると、備蓄は水から守られます。

そのかわり、どこに何があるか分からなくなります。分散保管の弱点は、実質これだけです。

2階の押し入れに水を何本置いたか、携帯トイレを何回分そちらへ移したか。半年経つと思い出せません。買い足すときに二重に買い、期限が来たものは忘れられます。

蔵太郎では、登録のときに置き場所を書いておけます。

  • 家じゅうのどこに何があるかを、場所ごとの一覧で見られます
  • 停電していてもオフラインで開けます
  • 家族の誰の端末からも、同じものが見えます

紙に書いて貼っておく方法でも構いません。分けて置くと決めたなら、どこに置いたかを残すところまでが一組だと思います。

出典

「浸水深が膝(0.5m)の高さ以上になると、ほとんどの人が避難困難でした」: 国土交通省「川の防災情報」浸水深と避難行動について

浸水深の階級が家の構造(1階の床高・2階の床下・2階の水没)に対応していること: 国土交通省「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」(PDF)

洪水と内水で浸水深の階級が異なること、家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)の「屋内での退避ではなく、早期の立ち退き避難が必要な区域」という説明: 横浜市「浸水ハザードマップ(港北区)」

水に浸かった食品は廃棄が原則であること、床上浸水での食器・調理器具の汚染: 大阪市「浸水後の衛生対策について」

各種ハザードマップ: 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」/地点ごとの浸水深と時間の変化: 国土地理院「浸水ナビ」

最終確認日: 2026年9月18日(凡例の確認は2026年8月29日)

蔵太郎

蔵太郎のひとこと

「全部を動かさなくて大丈夫です。水とトイレだけでも2階に分けておくと、いざというときに手が届きますよ」

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