ハザードマップに「何日分いるか」は載っていない——浸水継続時間の探し方

ハザードマップに「何日分いるか」は載っていない

ハザードマップを開いて、自分の家の色は確かめた。0.5〜3.0mの区域だった。——そこまでは、多くの方がされていると思います。

問題はその次です。で、うちは何日分そなえておけばいいのか。マップをどれだけ眺めても、そこは書いてありません。

色は「深さ」です。「日数」は別の数字で、別の地図に載っています。

マップの色が答えているのは「深さ」だけ

ここからは、実際に公開されているハザードマップで確かめていきます。例に使うのは横浜市港北区のものです。一級河川(鶴見川)の流域にある政令指定都市の区で、洪水・内水・高潮の3種類がそろって公開されている——多くの地域と同じ作りをしているためです。

洪水ハザードマップの色分けは、浸水の深さを表しています。港北区の凡例はこう書かれています。

  • 0.0〜0.5m未満 … おとなの膝まで浸かる深さ
  • 0.5〜3.0m未満 … 1階天井をこえて浸水する深さ
  • 3.0〜5.0m未満 … 2階部分まで浸水する深さ

浸水深と建物の階の対応。0.0〜0.5m未満はおとなの膝まで、0.5〜3.0m未満は1階天井をこえて、3.0〜5.0m未満は2階部分まで浸水する深さ。

階級の区切りは、家の構造に合わせて決められています。

これは「どこへ逃げるか」を決めるための数字です。備蓄の話でいえばどこに置くかには効きますが、何日分いるかには答えていません。

水が1階の天井まで来るとして、それが半日で引くのか、2週間残るのか。マップの色は、そこを区別していないからです。

日数を決めているのは「浸水継続時間」

その半日か2週間かを答えている数字が、別にあります。浸水継続時間といいます。

定義は「浸水深0.5mに達してから、その水深を下回るまでの時間」です。0.5mというのは、おとなの膝の高さ。国土交通省の資料には、浸水深が膝の高さ以上になると、ほとんどの人が避難困難だったと記されています。

浸水継続時間=家から出られない時間、そのもの

つまりこれは、水が引くまで買い物にも給水にも行けない日数です。備蓄が何日分いるかを決めているのは、深さではなくこちらのほうでした。

ところが、配られたマップには載っていません

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。浸水継続時間は、お住まいの市区町村が配っているハザードマップには載っていないことがほとんどです。

さきほどの港北区の浸水ハザードマップは、4枚組で公開されています。洪水(河川氾濫)、内水、高潮、そして解説面。このどの凡例にも、浸水継続時間はありません。あるのは浸水深のめやすだけです。

これは横浜市の不備ではありません。市区町村のハザードマップは「どう逃げるか」を伝えるための資料で、浸水継続時間はもともと別の図として公表されているからです。

では、どこにあるのか

3つの入口があります。どれか1つ辿れば出てきます。

  • 河川管理者のウェブサイト。国が管理する川なら国土交通省の各河川事務所、県が管理する川なら都道府県。「◯◯川 洪水浸水想定区域図 浸水継続時間」で探せます
  • 浸水ナビ(国土地理院)。地点を指定すると、その場所の浸水深が時間とともにどう変わるかが出ます
  • ハザードマップポータルサイト(国土交通省)。「重ねるハザードマップ」でレイヤーとして見られます

その港北区を流れる鶴見川で辿ってみます。国土交通省京浜河川事務所が「鶴見川水系洪水浸水想定区域図(浸水継続時間)」を公開していて、凡例は次の5段階でした。

  • 12時間
  • 24時間(1日間)
  • 72時間(3日間)
  • 168時間(1週間)
  • 336時間(2週間)

色ではなく、はじめから日数で書かれています。備蓄の目標日数として、そのまま使える形です。

出てきた日数を、必要な量に変える

あとは掛け算です。よく使われる3つの階級について、実際の量を出しました。

浸水継続時間 大人2人 大人2人+小学生2人
72時間(3日間) 水18L/主食18食/簡易トイレ30回分 水33L/主食33食/簡易トイレ60回分
168時間(1週間) 水42L/主食42食/簡易トイレ70回分 水76L/主食76食/簡易トイレ140回分
336時間(2週間) 水84L/主食84食/簡易トイレ140回分 水152L/主食152食/簡易トイレ280回分

「まず3日分」という言葉をよく聞きます。あれは全国どこでも最低限これだけは、という下限であって、お住まいの場所の答えではありません。2週間の区域にお住まいなら、3日分は5分の1です。

「まず3日分」は全国共通の下限。うちの数字は、うちの浸水継続時間が決めます。

ただし、先に確かめてほしいことが2つあります

1つめ。浸水継続時間の図には注記がついています。支川の決壊による氾濫、想定を超える規模の降雨、高潮や内水による氾濫は考慮されていません。実際の浸水継続時間とは異なる場合がある、という前提で読んでください。

2つめが大切です。お住まいが「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っていないかを、先に見てください。これは堤防の決壊にともなう氾濫流や河岸侵食で、家そのものが倒壊・流出するおそれがある区域です。港北区のハザードマップの凡例には、こう書かれています。

  • 屋内での退避ではなく、早期の立ち退き避難が必要な区域

この区域では、何日分そなえたかは関係ありません。家に留まる前提が成り立たないからです。備蓄の日数を考えるのは、その区域の外にお住まいだと確かめてからにしてください。

順番はこうなります

  • 家屋倒壊等氾濫想定区域かどうかを見る(入っていれば、そもそも逃げる)
  • 浸水継続時間を調べる(市区町村のマップではなく、河川管理者か浸水ナビで)
  • 出てきた日数ぶんの量を用意する

マップの色を見て「怖いな」で終わってしまうのは、色が日数を答えてくれないからです。もう1枚めくれば、うちの数字が出てきます。

出典

浸水深の凡例・家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)の説明: 横浜市「浸水ハザードマップ(港北区)」

浸水継続時間の凡例(12時間/24時間/72時間/168時間/336時間): 国土交通省 京浜河川事務所「鶴見川の洪水浸水想定区域図(浸水継続時間:想定最大規模)」

浸水深の階級が家の構造(1階の床高・2階の床下・2階の水没)に対応していること: 国土交通省「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」

浸水深と避難行動(膝の高さで避難が困難になる): 国土交通省「川の防災情報」

地点ごとの浸水深と時間の変化: 国土地理院「浸水ナビ」/各種ハザードマップ: 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」

必要量の目安(水3L・主食3食・簡易トイレ5回、いずれも1人1日あたり): 東京備蓄ナビ(東京都)のオープンデータに基づく(MIT License, Copyright (c) 2021 Tokyo Metropolitan Government and other contributors)

最終確認日: 2026年8月29日

蔵太郎

蔵太郎のひとこと

「調べるのは1回きりで大丈夫です。お住まいの川の名前で浸水継続時間が分かれば、あとは日数を入れるだけですよ」

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