ローリングストックが続かない理由——「防災の時間」を作らないほうが、続きます

ローリングストックが続かない理由

ローリングストックを一度はやってみた、という方は多いと思います。

食べたぶんだけ買い足して、いつも新しい備蓄がある状態にしておく。特別な買い物も、特別な置き場所もいりません。

それなのに、いつのまにか止まっています。久しぶりに箱を開けたら期限が切れていて、また最初からになっている。

調査を見るかぎり、続いているほうが少数派でした。

ローリングストックを実施しているのは24.6%。過去最高を記録した年の数字です。

続いているのは4人に1人でした

ミドリ安全の「2025年度 家庭の防災対策実態調査」に、ローリングストックの実施率が出ています。

24.6%。しかも、これは過去最高として発表された数字です。

調査は2025年2月6日〜11日、インターネットリサーチ。対象は子どもと同居している20〜49歳の全国の母親800名です。全世帯の平均ではない点は添えておきます。

同じ調査には、もうひとつ気になる数字があります。

備蓄が進まない理由の1位が「お金がかかる」で28.1%。前年から6.3ポイント増えています。

ここが少しねじれています。ローリングストックは、まさにその「お金がかかる」を避けるための方法として勧められてきました。

非常食を別に買うのではなく、ふだん食べているものを少し多めに持つ。出費は増えず、捨てるぶんも減ります。

お金の問題を解決する方法のはずなのに、実施しているのは4人に1人。つまり、続かない理由はお金ではないということになります。

優先度が下がるのは、正しいことです

続かない理由を「気が緩んだから」で片づけると、そこで話が終わってしまいます。

もう少し正直に見たほうが、たぶん先に進みます。

何も起きていない日に、災害の準備の優先度が上がることはありません。目の前にあるのは今日の仕事と今日の夕飯で、備蓄はその後ろに並びます。

これは異常なことではなく、平時というのはそういう状態のことです。

優先度が下がることを前提に置いて、それでも回る形にする。

逆に言えば、「今度こそ気をつける」「毎月1日に確認する」と決めるやり方は、うまくいきません。

この決め方は、毎月きちんと思い出せる自分を当てにしているからです。

ところが、そう決めた日がいちばん気持ちの高い日で、翌月からは下がっていきます。忘れたのではなく、ほかの用事の後ろに並んだだけです。

だから半年後、また同じところへ戻ってきます。続かなかったのは決めた人ではなく、決め方のほうです。

止まるのは、いつも「買い足し」のところ

ローリングストックは、2つの動作でできています。

  • 食べる(使う)
  • 買い足す

このうち、1つめは放っておいても起きます。食べるのは日常だからです。

問題は2つめです。買い足すには、何が減ったかを覚えていて、次に買い物へ行くときにもまだ覚えている必要があります。

ローリングストックの輪。食べる・使う、覚えておく、買い足す、の3つが輪になっていて、真ん中の「覚えておく」だけが日常の外にあり破線で描かれている。

両端の2つは日常の中で起きます。真ん中だけが自分の記憶に頼っていて、ここで輪が切れます。

そして、覚えておくのがつらくなってくると、人はたいてい同じ解決策を思いつきます。

ちゃんと棚卸しをする日を作ろう、という解決策です。

けれど、その日は来ません。「防災の時間」を作らないと進まない形にした時点で、さきほどの優先度の話に当たります。

すでにある行動に、乗せてしまう

ここから先は、蔵太郎からの提案です。調査で裏づけられた話ではありません。

新しく時間を作らずに済ませるには、すでに毎週・毎年やっていることに乗せるのがいちばん確実だと考えています。乗せ先は3つあれば足ります。

  • 買い物のついで。いつものレトルトや水を、1つだけ多めに買う。買い物リストの一番下に「1つ多め」と書いておけば、思い出す必要すらなくなります
  • 通知が鳴ったとき。覚えておく仕事を、自分の頭の外へ出してしまう。鳴ったときだけ動けばよくなります
  • 年に1回、防災の日。9月1日の前後は、家族が備蓄の話に付き合ってくれる唯一の時期です。大きい見直しは年1回ここに寄せる

どれも「防災をやっている時間」になっていないのが大事なところです。

防災のための時間だと自覚した瞬間に、それはまた優先度をつけられる対象になってしまいます。

期限は、何日前に気づけばいいか

通知に頼るなら、次に決めることが1つあります。何日前に鳴らすか、です。

3日前では間に合わないことがあります。その3日のあいだに買い物の予定がなければ、気づいたまま何もできません。

決め方はかんたんで、正しい日数を探すのではなく、その家の買い物の間隔から逆算します。

ふだんの買い物 必要な猶予の目安
週に1回まとめ買いする 7日あれば、次の買い物に間に合う
月に1回、まとめて注文する 30日ないと次の機会を逃す
取り寄せが必要なものがある 届くまでの日数を足す

買い物の間隔から逆算した目安です。調査にもとづく数字ではなく、蔵太郎からの提案です。

言いかえると、気づいてから期限までに買い物が1回でも入るかどうかです。

気づいた時点ごとに、期限までに買い物が入るかどうかの表。期限の3日前に気づいた場合、週に1回買う家では入らないことがあり、月に1回買う家ではまず入らない。14日前なら週に1回買う家は2回入り、月に1回買う家は入らないことがある。30日前なら週に1回買う家は4回、月に1回買う家は1回入る。

ふだんの買い物の間隔がこの中間なら、長いほうに寄せておくと取りこぼしません。

蔵太郎では、はじめから30日前と14日前の2回お知らせするようにしてあります。

1回目で買い物リストに入れて、2回目で「まだ買っていない」に気づく。2回に分けてあるのは、1回では必ず忘れる日があるからです。

棚卸しは、全部やらない

もうひとつ、続けるうえで効くことがあります。

家じゅうの備蓄を一度に確かめようとしないことです。

全部を並べて確認する形にすると、それだけで半日仕事になります。半日かかるとわかっているものは、翌年には始めなくなります。

見るのは今月切れるぶんだけ。それ以外は来月でかまいません。

今月ぶんだけなら、たいてい数点です。買い物リストに足して終わります。

ちなみに、この見直しでいちばん忘れられやすいのは食料ではありません。災害用トイレです。3日分以上を備えている家庭は27.2%で、水の69.8%に大きく差をつけられています。

食べるものと違って、使ったときに減ったことへ気づく機会がありません。ローリングストックの輪に、そもそも入りにくいものだと言えます。

ローリングストックが続かないのは、意志の問題ではなく形の問題だと考えています。

防災のための時間を作ろうとすると止まります。すでにある買い物と、すでに鳴る通知に乗せておくと、来月も続きます。

出典

ローリングストック実施率24.6%(過去最高)、備蓄が進まない理由「お金がかかる」28.1%(前年比6.3ポイント増): ミドリ安全「2025年度 家庭の防災対策実態調査」。調査期間2025年2月6日〜11日、インターネットリサーチ、子どもと同居している20〜49歳の全国の母親800名(地域別に各100名の均等割付)。

3日分以上の備蓄率(携帯トイレ・簡易トイレ27.2%/飲料水69.8%): 内閣府「防災に関する世論調査」(令和7年8月調査)。全国18歳以上・郵送法・有効回収1,707人。

⚠️ 「すでにある行動に乗せる3つ」と「期限に気づく日数の逆算」は、これらの調査の結果ではなく、蔵太郎からの提案です。本文中の図2点(輪の図・猶予の図)も同じく、調査にもとづくものではありません。

最終確認日: 2026年9月21日

蔵太郎

蔵太郎のひとこと

「続かなかったのは、やり方が悪かったからではありません。次の買い物で1つ多めに、から立て直せますよ」

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