公助はいつ来るのか——「まず3日分」の3日は、どこから来た数字か

公助はいつ来るのか

「備蓄って、結局いつまでの分があればいいんですか」

3日分と書かれていることもあれば、1週間分と書かれていることもあります。

どちらも見かけるので、どちらに合わせればいいのか決めきれないまま止まってしまう。備蓄の相談で、いちばんよく引っかかるところです。

この2つは、どちらかが古くてどちらかが新しい、という関係ではありません。それぞれ別の出どころがあって、別のことを言っています。

先に答えを書きます。3日というのは、国が「ここまでは家庭の備蓄で乗り切ってもらう」と置いている期間です。

「発災から3日間は家庭等の備蓄と被災地方公共団体における備蓄で対応することを想定し」——国の計画に、そう書かれています。

3日は、計画が置いている前提の数字です

引用したのは、南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画という文書です。

中央防災会議の幹事会が決めているもので、地震が起きたときに国が何をどう動かすかを分野ごとに定めてあります。さきほどの一文は、物資の調達にあてられた第5章に出てきます。

その章は、前提の説明から始まります。

  • 被災地方公共団体、家庭等で備蓄している物資が数日で枯渇する
  • 発災当初は、被災地方公共団体において正確な情報把握に時間を要する
  • 民間供給能力が低下する

だから被災した自治体だけでは物資をそろえきれない、と計画は書いています。そのうえで国は、被災した府県からの具体的な要請を待たずに物資を送ることにしています。これが「プッシュ型支援」と呼ばれる仕組みです。

つまり3日は、備蓄の呼びかけで使われる慣用句ではありません。国の側が置いている前提のほうです。

ひとつ、当てはまる範囲には注意が要ります。これは南海トラフ地震を想定した計画で、あらゆる災害の一般則として書かれたものではありません。「災害が起きたら3日」と読み替えないほうが正確です。

「支援物資は4日目以降」は、書かれていることと少し違います

備蓄の話題でよく見かける言い方に、こういうものがあります。

「支援物資が届くのは4日目以降だから、3日分は自分で持つ必要がある」

分かりやすい説明なのですが、計画の本文と並べると、少し違っていました。

よく見かける説明 計画に書かれていること
支援物資が届くのは4日目以降 プッシュ型支援は遅くとも発災後3日目までに、必要となる物資が被災府県に届くよう調整する
(4日目以降=届きはじめる時期) プッシュ型支援の必要量は、発災後4日目から7日目までに必要となる量を見込む

右の列は、上記計画の第5章からの引用です。

4日目から7日目は、物資が動きはじめる時期ではありません。そのあいだに必要になる量を、どれだけ見込むかという話です。

4日目〜7日目は「量」の話。「いつ届くか」の話ではありません。

この計画は改定されています。以前の資料では、同じ内容が「発災後3日まで(備蓄にて対応)」「発災後4〜7日(プッシュ型支援にて対応)」という帯の図で示されていました。

帯だけを見ると、支援は4日目から始まるように読めます。いま公開されている本文は、上の表のとおりです。

「3日目までに届く」の、届く先はどこか

3日目までに届くと書かれている届け先は、被災した府県の物資の輸送拠点です。各家庭の玄関でも、避難所でもありません。

拠点に着いたあと、そこから市町村へ、市町村から避難所へと配っていく段取りは、また別に定められています。計画には、拠点の開設状況を確認してから支援の実施を伝える手順も書かれています。

拠点に届いた時刻と、手元に届く時刻は別のものです。

訂正しても、3日分を持っておく理由は変わりません。計画そのものが「発災から3日間は家庭等の備蓄で対応する」と置いているからです。

国が要請を待たずに送る「基本8品目」

ついでに、何が送られてくることになっているのかも見ておきます。

基本8品目 排泄・衛生
食料
毛布
乳児用粉ミルク又は乳児用液体ミルク
乳児・小児用おむつ
大人用おむつ
携帯トイレ・簡易トイレ
トイレットペーパー
生理用品

品目は上記計画によるもの。●の印は、この記事の側で付けた整理です。

8つのうち5つが、排泄と衛生にあてられています。要請を待たずに送るものを国が絞り込むと、食料や毛布と並んでここが残る、という見方ができます。

もう1つの数字——「1週間分以上」はどこから来たか

ここまでは「3日」の話でした。冒頭のもう一方にも、出どころがあります。

同じ中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策についての最終報告に、家庭へ向けた記述があります。

「発災直後は特に行政からの支援の手が行き届かないことから、まず地域で自活するという備えが必要であり、……家庭備蓄を1週間分以上確保する」

2つの数字の関係は、これで見通せます。

3日 1週間分以上
出どころ 応急対策活動に関する計画 南海トラフ巨大地震対策の最終報告
何を言っているか ここまでは手持ちで、と国が置いている前提 家庭に確保してほしい量
向いている相手 国や自治体の動き方 各家庭

上限と下限ではなく、どちらも同じ方向を向いた、役割の違う数字だと考えるほうが近いと思います。

そのうえで、どちらの数字も、お住まいの土地の事情までは見ていません。水害で家から出られない日数は土地のほうで決まりますし、必要な量そのものは家族構成で変わります。

東京備蓄ナビのリストは何日分?では、同じ家族でも住まいの種類だけで必要量が2倍以上になることを、実際に数字で並べています。

日数を決める仕事だけは、外からは埋まりません

ここまで見てきたとおり、行政の備えが足りないという話ではありません。

要請を待たずに物資を送る仕組みが、あらかじめ品目と量まで決めて用意されています。それはそのまま、備えが積み上げられてきたことの表れです。

そのうえで、行政自身が書いている文章があります。平成30年7月豪雨を受けた中央防災会議のワーキンググループの報告は、最後を国民へのメッセージで結んでいます。

逃げることを中心にした報告なので、備蓄そのものの話は出てきません。それでも、ここまで見てきた前提がそのまま言葉になっているので、抜き出さずに全文を引きます。

報告はこのあと、行政主導から住民主体への「転換点」になることを期待する、という一文で終わっています。

備蓄の言葉に置き換えると、こうなります。

何日分が要るかを決められるのは、その家の事情を知っている人だけです。

何人で暮らしているのか。小さな子や高齢の家族がいるのか。その土地は水が引くのに何日かかるのか。

ここだけは、外から一律には埋められません。

3日か1週間かで迷って止まってしまうくらいなら、いまうちに何日分あるのかを一度数えてしまったほうが早いと思います。

水・食料・トイレを別々に数えて、いちばん小さかったものが、その家の日数です。水が10日分あっても、食料が2日で尽きればその家は2日です。

だから、次に足すのはいちばん小さかった1つで足ります。ほかを足しても、家全体の日数は動きません。

出典

本文で引用した計画の各文(3日間の想定・プッシュ型支援の到達・必要量の見込み)、基本8品目、物資調達の前提: 中央防災会議幹事会「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」(令和7年6月30日)第5章 物資調達に係る計画。計画本文(PDF・約5MB)内閣府 南海トラフ地震対策のページ

「発災後3日まで(備蓄にて対応)/発災後4〜7日(プッシュ型支援にて対応)」の帯の図: 内閣府「物資支援の計画概要について」(平成28年7月29日。資料(PDF・約2MB)の1枚目)。上記計画の当時の版を図示したものです。

「家庭備蓄を1週間分以上確保する」: 中央防災会議 防災対策推進検討会議 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」(平成25年5月)本文。報告本文(PDF・約0.6MB)同ワーキンググループのページ

「行政は万能ではありません。皆さんの命を行政に委ねないでください」ほか: 中央防災会議 防災対策実行会議「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について(報告)」(平成30年12月)「おわりに」。報告本文(PDF・約2.4MB)同ワーキンググループのページ

最終確認日: 2026年9月18日

蔵太郎

蔵太郎のひとこと

「3日か1週間かで迷って止まってしまうより、いまうちに何日分あるかを数えるほうが、ずっと先に進めます。数えたら、次に足すものは1つに決まりますよ」

うちの必要量を計算してみる(かんたん診断)